3.11 あの日からのこころの旅(3)

もうやめて!何度そういい追い払っても追い払ってももう一人の私がいってくる。
 
写真展をした時も、それを持って募金活動した時も、その声によって、その自分からである声に怯えてその声を無視して知らぬ顔で生きているように後ろめたかった。
彼らの本当の奥の奥のこころを掴めているのか。多くの人が亡くなっているのに、辛酸な生活を余儀なくされて懸命に生きているのに、私はこのままで生きていていいのか?

記録を残すために撮っているのに、それを伝えきれていない写真に何を残せているのだろうと夫は言葉にできない苦悩を理不尽に私に投げつけてくる。
お互いを傷付け合う言い争いを撮影から帰って来る度にしている。
写真を説明する言葉なんて言いたくなかった。言えば言うほど嘘をついているようで、写真を見れば見るほど嘘に見えてきて。
自分たちのこころは騙せないことをわかっていた。

その声と闘いながら別の私は、私達はとにかく眼に映るもの聞く言葉を肉体が何ものかにつき動かされるままに一心不乱に記録をとった。
それが当時の夫と私には精一杯だった。

そんなんじゃない!ってその声を打ち消しても、それ以上の言葉がずっとみつからないままだった。
そして…その声を聞くのが怖くなった。
自分が真っ二つに割られそうな上に、自分を見失いそうだった。
もうその声に抗う力がなくなった。
押し潰されてしまいそうなほど頻発してくるもう一人の私の声。
いっそその声に牛耳られたまま漆黒の穴にどこまでも落ちていってしまえばいい!と。

こんな私がまだ小学生の娘を育てていけるのか…でも、この子を育てなければ。
ぐるぐるとこころの中での会話は小さな切っ掛けから傷口をえぐり広げて途切れない日々…。

「彼らの分まで、生きたかった彼らの分まで必死に育てなければいけない。」
その言葉が巡って来たときに
その言葉にすがりついた。

それでいいのだと信じ込ませたかもしれないが逃げ道がなかった。

そして私を飲み尽くしてしまうその声を封じ込めた。

つづく

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