七年…ずっと語れなかった。
時が満ちたのだとおもう。
焼き付いてこころから離れない記憶を記録に残していこう
あの日からのこころの旅の終着駅にたどり着いたから。
彼の地で出会ったたくさんの生き続ける魂を宝物として抱いて
いま 再び新たな旅に向かおう。
2011.3.11 14:46
埼玉県の片田舎の公園に夫と犬の散歩にきていた。築山がありてっぺんに登りかけたとき…地面が揺れた。
土の下からぐおーおおおおと音がする。
座り込んだ土の下が回っていた。
駐車場に停めた車がひっくり返りそうなほど左右上下に私達と同じように揺れていた。
揺れがおさまったあとも公園は静かだった。
いつもと変わらない空気。
いや、何かが、大変な何かが起こった。
こころがざわめいた。
小学校にいる娘を心配し、その足で迎えに行く。校庭に出されていた子供たち、先生方、迎えに来る親達で騒然としている。その最中にも揺れがあり緊迫感で皆が強張っている。
娘を連れ帰ると、家族皆一緒にいなければ、片時も離れてはいけないと感じていた。
家の屋根瓦が落ち、台所はコーヒーメーカーやボウルなど安定感がないものや高いところに置いてあるものが床に全て落ちていた。
ガスも電気も使えない。家中のロウソクや懐中電灯、ホカロンや毛布などをかき集めコンビニへ水を買いに自転車で走った。店内の食料品や飲料など品物がなくなりつつあった。
何が起こったのか、こころはまだよくわからないままライフラインの確保に体は奔走していた。
夜には東京の事務所の様子を見に娘と犬を連れて車で皆で移動した。
日常目にしない道路を歩く大勢の人。
真っ暗な街。
静けさが怖かった。
日常がひっくり返る大変なことが起こったのだ。
パソコンが落下し散乱した事務所の壁には亀裂が入っていた。一晩、眠れず皆離れずに事務所で過ごし積めるだけの荷物を引き上げ車で自宅へと走らせる。
夜が明けても歩き続ける人がいる。
途中のファミレスで朝食をとる。
新聞を見て少しずつ状況が分かり始めた。
いや、自分自身のこころが分かろうとし始めた。
戦争も体験していない平和な日本で生まれてから生命の危険を感じる災害や事件事故もなく暮らしてきた私には遥か想像を超えた事態が起こったということはうっすら感づいてはいても実感していくという感覚の解放を閉ざしていた。
抱えきれない経験したことのない恐怖から自己防衛するためだろう。
それが土の下からの轟音、体全体振り回されるような揺れ、娘の安否、ライフラインが途切れ、今にも倒壊しそうな事務所ビルでの一夜、真っ暗な静まりかえった街、その道路を黙々と歩く行列の人など…否が応でもこの体に刻みつけられていく感覚の小さなカケラたちが塊となって扉を押し開けたのだ。
「受け入れなさい」と。
つづく
ten-maru-chan
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